相続放棄⑥-1 債権者が私達の相続登記をしています・・・
ご相談内容
大阪在住のAさんが事務所に来られて相談をうけました。
内容は、お父さんの相続について相続放棄をしたいとのことです。お父さんは2ヶ月前に亡くなったそうで、相続人はAさんの兄弟3人だけだそうです。
お父さんはずっと独り暮らしだったそうで、亡くなったとの連絡もお父さんの近所の人からもらったそうです。兄弟3人ともが独立していて数年来ほとんど連絡をとって無かったようです。
Aさんがお父さんの家をかたづけていると、サラ金業者からの請求書が出てきたそうです。
相続財産は、借金があるくらいなので、預貯金は無く、小さな自宅の土地建物だけだそうです。そこで相続放棄をしたいとのことです。
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- 相続放棄の要件について説明して下さい。
- 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申述しなければなりません。そして、相続の法定単純承認事項に該当する事実があれば相続をしてしまっているので、もはや相続放棄はする事ができません。
Aさんの場合はお父さんが亡くなってから2ヶ月ですし、特に単純承認事項もないとのことでしたので、相続放棄ができると思われました。
Aさんには、お父さんの自宅が必要ないのであれば、売却して債務を返済してはどうかと尋ねましたら、借金がいくらあるかわからないのでやっぱり相続放棄をしたいとのことでした。
借金がいくらあるかわからないから相続放棄するのであれば、相続の限定承認という方法もある事を説明しました。
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- 相続の限定承認について説明して下さい。
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相続人が相続によって取得する財産の範囲内においてのみ、被相続人の債務及び遺贈を弁済する責任を負うことです。
相続財産が債務超過であることが明らかであれば、相続人は相続放棄をすればよいのですが、債務の方が多いのか少ないのか解らない場合は限定承認をするメリットがあります。
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- 限定承認の仕方、制度についてもう少し説明して下さい。
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限定承認の要件は次のようになっています。
1.自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に対して申述しなければなりません。
2.法定単純承認事項に該当する事実があった時はもはや限定承認はできません。
3.必ず相続人全員が共同してしなければなりません。従って、相続人のうち一人でも、法定単純承認事項に該当する事実があった場合はもはや相続人全員が限定承認はできません。
4.相続人が複数存在する場合は、家庭裁判所によって管理人に選任された相続人が相続財産を管理します。
Aさんに限定承認についても説明しましたが、お父さんの自宅の売却にも時間がかかるし、相続財産の管理も大変だし、兄弟3人とも仕事も忙しく早くに片づけたいとの意向が強く、やはり相続放棄をしたいとのことでした。
Aさんの意向通りに相続放棄をする方向で進めようとしたのですが、実はお父さんの自宅に兄弟3人が相続人として相続登記がされているのです。
少し、稀なケースですが、たまに見かけますので事例集に掲げておきます。
少し長くなりましたので、「相続放棄⑥-2 債権者が私達の相続登記をしています・・・」に続きます。