相続法の改正③(相続の効力等)

不動産に関する権利の承継に関する相続分の指定や遺産分割方法の指定について,登記なくしてその権利を第三者に対抗できるとした判例を変更する,法改正です。法定相続分を超える部分については,登記をしなければ第三者に対抗することができなくなります。

民法第899条の2の規定は令和元年7月1日施行です。そして,施行日以前に開始した相続でもその適用がありますので注意して下さい。

我々司法書士にとっては重要な法改正となります。

民法第177条は次のように規定されています。

(不動産に関する物件の変動の対抗要件)

第177条  不動産に関す物件の得喪及び変更は,不動産登記法(省略)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない。

相続等の場合の判例の考え方

1.法定相続分による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗できる。

2.相続分の指定による不動産の権利の取得についても,登記なくしてその権利を第三者に対抗できる。

3.「相続させる」遺言についても,特段の事情が無い限り「遺産分割方法の指定」としたうえで,遺産分割の効果を認め,当該遺言によって不動産を取得した相続人は,登記なくしてその権利を第三者に対抗できる。

4.相続放棄の申述を行った場合には,登記なくしてその権利を第三者に対抗できる。

5.遺贈による不動産の取得については,登記をしなければこれを第三者に対抗することはできない。

6.遺産分割協議による不動産の取得も,登記をしなければこれを第三者に対抗することはできない。

相続分の指定や遺産分割方法の指定は包括承継と考えられており,遺贈や遺産分割協議による物権変動は特定承継と考えられております。しかし,相続分の指定や遺産分割方法の指定は,実質的には被相続人の意思表示によって法定相続分を変更するという意味合いも有するものと思われます。つまり,「法定相続分の割合に従った包括承継」と「意思表示による特定承継」の中間的に位置づけることもできます。

そこで,今回の法改正で,法定相続分を超える部分については,登記なくして第三者に対抗できなくなります

 

【新設条文】(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2  相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない。
2  前項の権利が債権である場合において,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては,当該債権に係る遺産分割に内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは,共同相続人の全員が債務者に通知したものとみなして,同項の規定を適用する。