相続法の改正③(相続の効力等2)

不動産の対抗関係については,前回記載しましたが,今回は動産及び債権についてです。

民法第899条の2の規定は令和元年7月1日施行です。そして,施行日以前に開始した相続でもその適用がありますので注意して下さい。

動産について
改正法第899条の2第1項で,対抗要件主義が採用されたことにより,動産の相続についても,相続分の指定や遺産分割方法の指定があった場合には,遺贈や遺産分割協議と同様に対抗関係に立つことになります。
そして,動産の対抗関係については,民法第178条に規定されています。動産の対抗要件は,その動産の引渡しが必要です。しかし,動産の場合には,取引の安全を図るために占有に公信力を認めた即時取得制度(民法第192条)がありますので,即時取得制度が重要視される場合が多いと言われています。

 

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第178条 動産に関する物権の譲渡は,その動産の引渡しが無ければ,第三者に対抗することができない。

(即時取得)
第192条 取引行によって,平穏に,かつ公然と動産の占有を始めた者は,善  意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する。

 

債権について
改正法第899条の2第1項で,対抗要件主義が採用されたことにより,債権の相続についても,相続分の指定や遺産分割方法の指定があった場合には,遺贈や遺産分割協議と同様に対抗関係に立つことになります。
そして,債権譲渡の対抗関係については,民法第467条(債権改正法)に規定されています。つまり,債権譲渡の対抗関係は,「確定日付ある通知または承諾」が必要ということになります。
改正法第899条の2第2項では,法定相続分を超えて債権を承継した共同相続人による通知については,対抗要件としての通知として,本来共同相続人全員でするべきでしょうが,受益相続人が単独で通知を行えるように規定されています。

 

(債権譲渡の対抗要件)
第467条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は,譲渡人が債務者に通知し,又は債務者が承諾をしなければ,債務者その他の第三者に対抗することができない。
2  前項の通知又は承諾は,確定日付ある証書によってしなければ債務者以外の第三者に対抗することができない。

 

【新設条文】(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2  相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない。
2  前項の権利が債権である場合において,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては,当該債権に係る遺産分割に内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは,共同相続人の全員が債務者に通知したものとみなして,同項の規定を適用する。