相続法の改正②(遺言執行者の権限2)

特定財産承継遺言について対抗要件具備行為が遺言執行者の権限に含まれると明確にされました。

特定財産承継遺言・・・遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言。

対抗要件具備行為は,受益相続人にその権利を完全に移転させるために必要な行為です。特に「特定の財産を特定の相続人に相続させる」遺言による権利の承継について,法定相続分を超える部分については対抗要件主義が適用されます。(第899条の2第1項)

つまり,受益相続人にとって早急に対抗要件を具備する必要性が高まりました。

 

【新】(共同相続における権利の承継の対抗要件)

第899条の2  相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない。

2  前項の権利が債権である場合において,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては,当該債権に係る遺産分割に内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは,共同相続人の全員が債務者に通知したものとみなして,同項の規定を適用する。

 

【新】(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条  前三条の規定は,遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には,その財産についてのみ適用する。
2  遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは,遺言執行者は,当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

3  前項の財産が預貯金債権である場合には,遺言執行者は,同項に規定する行為のほか,その預金または貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし,解約の申入れについては,その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

4  前二項の規定にかかわらず,被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは,その意思に従う。

 

【旧】(特定財産に関する遺言の執行)

第1014条  前三条の規定は,遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には,その財産についてのみ適用する。