遺留分② 遺言書で私の相続分が少なすぎる・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。

内容は、お父さんが亡くなられた事の相続問題です。

Aさんには、兄と弟と妹がいます。母は数年前に亡くなったそうで、父の相続人は子供4人だけです。相続財産は自宅の土地建物(評価額5000万円)、現金1200万円ぐらいだそうです。

ここまでは何の問題もないのですが、実はAさんのお父さんは遺言を遺しており、その内容は自宅の土地建物はAさんのお兄さんに相続させる。残る現金がAさんと弟、妹の三人で1/3づつ相続させる、という事でした。Aさんいわく、確かに、Aさんのお兄さんは親とずっと同居しており、親の老後の世話もしてきたけれどこの遺言のとおりに遺産相続しないといけないのだろうか?Aさんと弟、妹は少し不満があるようです。

  1. 遺言の執行について説明して下さい。
    遺言の執行とは、遺言の内容を実現することをいい、実現する人を遺言執行者といいます。遺言執行者は、遺言者の指定または家庭裁判所の選任によって決定されます。遺言執行者は相続人の代理人として、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。

この遺言通りに遺産分割して相続すると、お兄さんは評価額5000万円の自宅、Aさんと弟、妹は400万円づつの現金となり、お兄さんと私たちとでは相続分に差がありすぎるとAさんはいいます。少しぐらいの差ならば、親の遺言ですし承諾しますが、本来、法定相続分は平等のはずなのに、差が大きすぎるといいます。

そこで、Aさんに遺留分制度について説明しました。

遺留分制度については“遺留分1-①遺留分1-②”で詳しく説明しております。こちらをご参照ください。

  1. Aさんたちの具体的遺留分について説明して下さい。
    この相談内容から計算します。
    1.被相続人はお父さん、相続人は子供4人ですので、
         遺留分率は1/2です。

    2.遺産総額は、自宅5000万円と現金1200万円で、
         合計6200万円。

    3.遺留分は6200万円×1/2=3100万円
    4.兄弟4人の相続なので、
         3100万円×1/4=775万円

    5.お兄さん、Aさん、弟、妹のそれぞれの具体的遺留分は
         775万円となります。

    6.775万円を下回る相続分であれば、
         それぞれの遺留分を侵害する事になります。

Aさん、弟、妹の具体的遺留分はそれぞれ775万円なので、お父さんの遺言通り遺産分割をして相続すると、お兄さんはAさんたちの遺留分を各々一人375万円侵害することになります。

  1. 遺留分を侵害する遺言や贈与は無効なのではないですか?
    遺留分を侵害する遺言等も無効にはならず、遺留分を侵害された相続人は遺留分減殺請求権を取得するだけです。遺留分減殺請求権を取得するだけなので、その請求権を行使しなければなにもならない事はいうまでもありません。

    遺留分減殺請求権についても“遺留分1-①遺留分1-②”で詳しく説明しております。こちらをご参照ください。

もともと兄弟仲が良かった4人ですので、遺言の内容や執行について、法定相続分は平等、遺留分権や遺留分減殺請求権とかもあるしという話し合いをもって円満に解決されました。

ここでも、当事務所が相続、遺言、遺留分権について説明をさせていただいたことによって円満解決できたものと自負しております。

総括

相続の場面では、トラブルになるケースもままあります。お金の事になると急に態度を変える人も出てきます。

遺言があればトラブルになることは少ないとはいえ、トラブルにならない事はなく、遺言があるためにトラブルになるケースもあります。

しかし、遺言はご本人の最終意思なので、相続人の方は、亡くなった人がこのように思っていたのかと思えば納得もしやすものです。

相続、遺言に関し少しでも疑問に思ったり、不安に感じたら相続、遺言の専門家にご相談下さい。