遺留分①-1 夫が愛人に全財産をあげてしまった・・・
ご相談内容
大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。
Aさんにはご主人との間に子供が2人おります。ご主人が3ヶ月ぐらい前に亡くなられて、相続が開始しました。
Aさんは、自分の仕事を持っており、毎日忙しくしていたこともあり、また遺産相続については初めてだったので、ご主人名義の財産はそのままにしていたそうです。
数日前に、突然ご主人の愛人Xさんが夫の遺言書を持って現れて、ご主人名義の財産は全て私の財産だからこの家から出て行ってほしいと言われたそうです。確かに遺言書には全財産をXに贈与(遺贈)するとなっていました。
実はAさんは仕事が忙しく、なかなかゆっくりとご主人と過ごす時間が少なったらしいのですが、ご主人に愛人がいることは気が付いていたようです。外泊する事も度々あったようで、だから余計にAさんは仕事にのめり込んでいったのかも知れません。
とはいえ、このままではAさん親子は遺産も何もないまま家から出て行かなければなりません。相続財産はご自宅と預貯金だそうです。
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- 遺言書について説明して下さい。
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一般的な遺言書は普通方式の遺言で3種類あります。
① 自筆証書遺言
遺言者が全文、日付及び氏名を自書し、これに押印する方式② 公正証書遺言
証人2人以上の立会のもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が遺言者の口述を筆記して、これを遺言者及び証人に読み聞かせて作成する方式③ 秘密証書遺言
遺言者が遺言書に署名、押印し、その証書に封をして遺言書に用いた印章でこれに封印し、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して作成する方式遺言書の偽造、変造を防ぎ、遺言書を確実に保存して遺言者の真意を確保する必要がある為、遺言者が死亡した時は、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。(公正証書遺言書を除く)
この、検認手続きは、遺言書の偽造、変造を防ぐためのものであり、遺言書の成立や内容の有効性を確定させるものではありません。
Aさんが持ってきた遺言書のコピーは、公正証書遺言であり、この遺言の成立、有効性を争う余地は殆どないと思われたので、その旨を説明し、遺留分の減殺請求をする方向で検討に入りました。
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- 遺留分について説明して下さい。
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遺留分とは、被相続人の配偶者、直系尊属、直系卑属に留保されている相続財産の割合をいいます。兄弟姉妹には認められていません。尚、遺留分はあくまでも相続人に認められる権利ですので、相続欠格、廃除、相続放棄があれば遺留分も認められません。
遺留分の割合(遺留分率)は、直系尊属のみが相続人である時は、遺産総額の3分の1であり、その他の場合は2分の1です。
本来、被相続人は自己の財産を自由に処分できるはずですから、全財産を生前に贈与することも、遺言で贈与(遺贈)することも自由にできるはずです。しかし、一方で相続制度が遺族の生活保障や遺産形成に貢献した遺族の潜在的持分を清算するという機能等も有しているため、遺族の正当な利益を無視することもできません。また、旧来からの日本の家制度の関係で、生産農家のように田や畑などの相続財産が家系の外の者への流出を防ぐ事も必要な場合があります。そこで、遺族の利益を保護する為に、遺留分制度が必要になってきます。
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- 遺留分額はどのように算定しますか?
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被相続人の遺産の額に遺留分率を乗じて計算します。
相続開始時の相続財産額 + 贈与した財産額 ― 相続債務 = 遺留分算定の財産額
贈与した財産は、相続開始の1年前までにしたものに限ります。ただし、1年より前の贈与でも、当事者双方が遺留分権利者に損害を与える事を知って贈与した時は、その贈与財産も含めます。
少し長くなってしまいましたので、遺留分減殺請求①-2 夫が愛人に全財産をあげてしまった・・・に続きます。