相続放棄⑩ 未成年の子の相続放棄はどうなるのですか・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。

Aさんのご主人が先月亡くなられたそうです。相続人はAさんと未成年者の子供Bさんです。Aさんは、Bさんはまだ未成年者だし、自宅や預貯金を相続させてもまだよく理解できないように思われていたため、全てAさんが相続するつもりであったそうです。

そのように、Aさんが全て相続するにはどのようにすれば良いか、何か問題があるかとのご相談でした。

  1. Aさんが全て相続するにはどうのようにすれば良いですか?
    相続人が複数人いてる場合で、一人の相続人が全て相続する方法は、遺産分割協議で単独で相続する方法と、相続する人以外の相続人には相続放棄をしてもらう方法があります。
  2. Aさんの場合はどちらの方法がよいでしょうか?
    どちらの方が良いとは一概には言い切れません。
  3. 何か問題がありますか?また、どのような問題が考えられますか?

    未成年者の子供はAさんの親権に服してますから、手続き上の問題があります。

    遺産分割協議を行う場合
    AさんとAさんの子供と遺産分割協議を行う場合は、親権者と親権に服する子供と遺産分割協議を行う事となり、利益相反行為に該当します。利益相反行為に該当しますので、裁判所に、子供のために特別代理人の選任請求を行い、その特別代理人とAさんとの間で遺産分割協議を行う事になります。特別代理人と遺産分割協議を行うため、Aさんが全てを相続する事ができるかどうかはわかりません。

    (最判昭48.4.24)
    親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をする事は、仮に親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図が無く、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていなかったとしても、民法826条2項所定の利益相反行為に該当する。

    (最判昭37.10.2)
    民法826条所定の利益相反する行為にあたるか否かは、当該行為の外形で決すべきであって、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とすべきではない。

    (利益相反行為)
    第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
    2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

    相続放棄を行う場合
    AさんがAさんの子供の相続放棄の申述を行う場合は、利益相反行為に該当するという判例があります。利益相反行為に該当しますので、やはり裁判所に、子供のために特別代理人の選任請求を行わなければなりません。そして、その特別代理人から相続放棄の申述をしてもらう事になります。

    (最判昭53.2.24)
    共同相続人の一人が他の共同相続人の全部または一部の者を後見している場合において、後見人が被後見人を代理してする相続の放棄であっても、後見人がまず自らの相続を放棄した後に被後見人全員を代理してその相続を放棄したとき及び後見人自らの相続の放棄と被後見人全員を代理してするその相続の放棄が同時になされたと認められるときは、利益相反行為に該当しない。
    (民法860条は後見人と被後見人との利益相反行為につき民法826条を準用している。)
    共同相続人の一部の者の相続放棄の結果として、相続分の増加する相続人が生ずるのであるから、相続の放棄をする者とこれにより相続分の増加する相続人とは利益相反の関係にあり、相続の放棄が相手方のない単独行為であることから利益相反行為に当たる余地がないと解するのは相当でない。

総括

相続問題は誰にでも起こり得る身近な問題である為、昔から争われるケースも多々あり、多くの判例や通達が存在します。条文を誤って解釈してしまったり、判断に誤りがあった場合には、思ってもみなっかった方向に進み望んだ結果を残す事はできません。

少しでも相続や相続放棄について疑問や不安がありましたら、相続、相続放棄、遺言の専門家である当事務所のご相談下さい。