代襲相続④ おなかの子供は相続できないのですか・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。

Aさんは相談当時妊娠6ヶ月で、おなかの中に子供がいました。

相談内容は、今回亡くなられたのは、Aさんのご主人のお父さんであるXさんで、ご主人は事故で亡くなられ、Xさんは病気で続いて亡くなられたそうです。

つまり、ご主人の相続とXさんの相続問題という事になります。ちなみにXさんには奥さんがおられ、弟さんもおられるそうです。

  1. XさんとAさんのご主人の相続関係について説明して下さい。

    ①Xさん(Aさんのご主人のお父さん)の相続関係について
    Xさんの相続人は子供(Aさんのご主人)とXさんの奥さんということになります。そして、子供(Aさんのご主人)がXさんより先に亡くなっていますので、代襲相続の問題となります。
    Aさんのおなかの中の子供が代襲相続できるのであればおなかの子とXさんの奥さんが相続人となります。代襲相続できないのであれば、Xさんの奥さんとXさんの弟が相続人となります。

    ②Aさんのご主人の相続関係について
    Aさんのご主人の相続関係は、奥さんであるAさんとおなかの子供が相続できるのであればおなかの子供、おなかの子供が相続出来ないのであれば、AさんとXさん及びAさんのご主人のお母さんという事になります。そしてこの場合には、XさんはAさんのご主人に次いで亡くなっていますので、Aさんのご主人の母親、つまりXさんの奥さんとXさんの弟が相続人となります。

  2. おなかの子供(胎児)の相続について説明して下さい。
    おなかの子供、いわゆる胎児でも相続できます。

    民法(相続に関する胎児の権利能力)
    第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

    結局、Aさんのご主人の相続人及び相続分はAさん1/2、胎児1/2となり、Xさんの相続人及び相続分はXさんの奥さん1/2、Aさんのご主人を代襲して相続する胎児1/2ということになります。

    胎児が権利能力を有するのは、他にもあります。
    民法第3条で、「私権の享有は、出生に始まる」と規定されていますが、次のように修正されているものもあります。

    民法(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
    第721条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。

    民法(胎児又は死亡した子の認知)
    第783条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。

Aさんいわく、もし胎児が死産となってしまったらどうなるのかということですが、民法886条第2項に定められております。

民法(相続に関する胎児の権利能力)
第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

しかし、確定するまでに既に相続財産の処分が終わってしまっていたらどうするのか?ということですが、その場合には、逆巻き式に修正してもう一度相続のやり直しをしなければならないでしょう。

総括

相続は亡くなる順番や婚姻、養子縁組の順番、親族関係で権利義務が非常に複雑なものになります。

相続順位や相続分、相続に関する権利義務について少しでも疑問や不安がある場合には、相続の専門家である当事務所にご相談下さい。