相続財産の家に人が住みついていますが②・・・(子供の嫁)

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。

内容は、私は相続人のひとりですが、相続人に何の相談もなくて相続人でない人が家に住みついているとの事でした。

相続物件の家は大阪市内にあるそうですが、その家の所有者はAさんのお父さんだったそうです。そして、お父さんが亡くなったので相続財産のいわゆる遺産分割をしようとしているが、なかなか進まないそうです。

相続関係は亡くなられたのはお父さんで子供が3人、お母さんは5年前に亡くなられたそうです。長男も3年前に亡くなられていました。長男夫婦には子供が無かったため、今回の相続人はAさんとAさんの妹Bさんということになります。AさんBさんはそれぞれ独立しているので、家とかの不動産も全て売却して、換金してから相続しようと考えていたそうです。

ところが、長男の嫁であるXさんが一向に家から出ようとはしないどころか、長男が生きていたならば相続できたであろう遺産をもらいたいとAさんBさんに言ってくるそうです。よく話を聞くと、現在Xさん住んでいるお父さん名義の家で、従前はお父さん、長男そしてXさんの3人が暮らしていたそうです。そして、お父さんは施設に入所し、長男さんは亡くなり、Xさんひとりで住むようになったようです。

AさんBさんいわく、お父さんがまだ生きていた時にはXさん一人が住んでいても仕方がないと思っていましたが、お父さんの財産を私達が相続した今、家は私達の所有なのでXさんの勝手にはさせたくない。早く出て行ってほしいということでした。

  1. Aさん、Bさん、Xさんの権利関係はどのようになるのですか?
    お父さんの相続人はAさん、Bさんの2人です。XさんにAさんたちのお父さんの相続権はありません。したがって、Xさんは、長男が生きていたら長男が相続できたであろう相続分を欲しいという主張にならざるを得ないものと思われます。しかし、これはあくまでもXさんの主張であって、被相続人よりも先に相続人が亡くなってしまった場合のいわゆる代襲相続の制度があるので、やはりXさんの主張は失当であり、相続財産をもらう事はできないと思われます。
  2. 一刻も早く、Xさんには家から出て行ってもらいたいのですが?
    この問題は相続問題とはまた別の問題もからんでくるように思われます。
    従前この家でお父さん、長男、Xさんが暮らしていました。お父さんは自分の所有している家で生活するのは当然として、長男夫婦は賃料等の支払をせずにこの家を使用してきたのですから、いわゆる暗黙の使用貸借契約が成立しているものと思われます。最も、見ず知らずの他人を住ますことは無いと思われますので、この契約はお父さんと長男で結ばれていたものと思われます。そして、長男が3年前に亡くなった後もXさんは一人でこの家を使用してきましたが、この使用貸借契約をそのままXさんに適用できるかどうかが問題です。

    民法(借主の死亡による使用貸借の終了)
    第599条 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

    つまり長男が亡くなった時に使用貸借契約は終了しているのではないかという事になります。
    しかし、まさに今回のケースと同様なケースでの判例がありますので紹介しておきます。

    (東京高裁平成13年4.18)
    建物を相続したXらが、当該建物に居住するYらに対し、建物の明渡し等を求めた事案。
    Yの夫Aは当該建物を所有していた被相続人Bの黙認のもと当該建物に長年居住しており、A及びBの死亡後にYらは当該建物の明渡し等を求められた。
    本判決は、AがBから実子同然に育てられてきたこと、Aら一家は昭和45年頃から長年当該建物で住居として生活し、平成5年までBと同居してその面倒もみていたこと、同居が終わった以後もBがA一家に建物の明渡しを求めたことがないこと等から、BはAらが当該建物に居住し続けることを黙認していたと認めることができ、AとBとの間で黙示的に建物の使用貸借の合意が成立したものと解することができると認め、更に「本件のように貸主と借主との間に実親子同然の関係があり、貸主が借主の家族と長年同居してきたような場合、貸主と借主の家族との間には、貸主と借主本人との間と同様の特別な人的関係があるというべきであるから、このような場合に民法599条は適用きれないものと解するのが相当である」と判示して、Yらが使用貸借契約上の借主としての地位を相続により承継することを認めた。

総括

上記の判例の通り、実際は法律の条文通りに判断できない場合がある事をよく理解しておく必要があると思われます。

本件判例から判断するとしても、どこまでが必要な要件となるかは難しい問題です。そして、今回の相談者Aさんのケースにそのまま当てはめて、適用できるかどうかは判断がわかれるところだと思われます。

実際の場面とよく照らし合わせて考えなければなりません。