相続財産の家に人が住みついていますが①・・・(相続人の両親)

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。

内容は、私は相続人のひとりだと思うのですが、相続人に何の相談もなくて相続人でない人が家に住みついているとの事でした。

相続物件の家は岡山県にあるそうですが、その家の所有者はおじさんだったそうです。そして、おじさん夫婦には子供が無かったため、兄弟相続になっているのですが、その兄弟が8人兄弟で、ずいぶんと以前の相続のため、代襲相続、数次相続となっており、相続人全員で23名でした。(この相続関係は戸籍等を取得して確認したもので、Aさんが相談にこられた時に判明していたものではありません。)

その家の所有者はおじさんだったのですが、おじさんが亡くなった後おばさんがずっと独りで住んでいたそうです。

そのおばさんも昨年に亡くなってその家の相続問題が発生したようです。そして、どうも、その家に住んでいるのはXさん夫婦で、23人いる相続人の中の1人の両親が住んでいるようでした。

事情を確認すると、Xさん夫婦は亡くなられたおじさんとおばさんの同世代で、岡山の田舎の事でもあり、おばさんの介護を住み込みで行っていたそうです。

そして、おばさんが亡くなられてもそのままその相続財産である家に住みついているそうです。

  1. 今回のXさん夫妻の権利関係について説明して下さい。
    おばさんはおじさんの相続人のひとりですから、その家に住む事について誰も何も言わなかったものと思います。Xさん夫妻は、住み込みでおばさんの介護をしてきたということですので、おばさんとあるいはその家の相続人等とXさん夫妻の間に、暗黙の使用貸借契約が生じていたものと思われます。おばさんが亡くなられて介護の必要が亡くなった今、Xさん夫妻にその家の占有権限があるかどうかが問題になります。

    民法(使用貸借)
    第593条 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

  2. おばさんが亡くなったので、今、Xさん夫妻には使用権限は無いと思うのですが?
    おばさんが亡くなった、つまり、貸主が亡くなったからと言って当然に使用貸借契約は終了するものではありません。借主が亡くなれば使用貸借契約は終了します。これは、使用貸借契約は貸主、借主の人的信頼関係の基づいて成立するものだからです。ただし、これは使用貸借契約の契約関係があってのことです。

    民法(借主の死亡による使用貸借の終了)
    第599条 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

  3. その他に使用貸借契約の終了事由はありますか?
    民法597条に次のように定められております。

    民法(借用物の返還の時期)
    第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
    2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
    3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

総括

今回のケースではAさんに法律的な見解を示して説明を行い納得していただきました。

もともと使用貸借契約は貸主借主の人的信頼関係を基礎としているため、契約書などの書面はほとんどなく、学説や判例の積み重ねで処理しなければならない場合が多いと思われます。

当然、人的信頼関係を基礎としているので、賃貸借契約で適用される信頼関係理論の適用はあると思いますが、やはり最終的にはお互いの思いやりで処理するべきでしょう。