代襲相続③ 父が生きているのに私が相続人となるのですか・・・
ご相談内容
大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。
Aさんには弟のBさんがいます。AさんのおじいさんXさんが亡くなられたそうです。
戸籍等でXさんの相続関係、Aさんとの関係を調査したところ、AさんのおとうさんのYさんはXさんから相続廃除されていました。
Aさんの弟BさんはYさんが相続廃除された後に生まれた子供ですが、Aさんは相続廃除される前に生まれていた子供でした。
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- 相続の廃除について説明して下さい。
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遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。(民法892条)
被相続人が、自己の財産を推定相続人に相続させたくないと考えるのが無理からぬような場合、被相続人自ら推定相続人の廃除を求める制度です。その、無理からぬ理由とは、被相続人に対する「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」の3つです。
よく似た制度に相続欠格があります。民法891条に該当すれば相続欠格となり、当然に相続権を失います。主な欠格事由は次のとおりです。
① 故意に被相続人、または相続に関して先順位もしくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処せられた者
② 被相続人が殺害されたことを知りながらこれを告発せず、または告訴しなかった者。
③ 被相続人の遺言の行為を不正に妨害した者(詐欺、脅迫、偽造・変造・破棄・隠匿等)
今回の事案では、AさんBさん共にYさんを代襲して、Xさんの相続について相続人となります。Aさんはお父さんのYさんがまだ生きているのにXさんの相続人になる事について不思議がっていましたが、代襲相続について説明し納得していただきました。
一歩進んで
本件はXさんが最近亡くなった事案でしたが、Xさんが、昭和37年7月1日から昭和55年12月31日までの間に死亡していた場合には、どうでしょうか?
じつは、昭和55年の改正民法前の昭和37年改正民法881条第1項の規定では、
「相続人となるべきものが、相続の開始前に死亡し、又はその相続権を失った場合において、その者に直系卑属があるとき」となっていました。その規定ぶりからすると、代襲者は被代襲者が相続権を失った時に存在する事を要すると解されていました。つまり、本件では、Yさんが相続廃除される前に生まれているAさんは代襲相続人となりますが、Yさんが相続廃除されてから生まれているBさんには代襲相続権はないことになります。
もう一歩進んで
YさんがXさんの相続について、相続放棄をして相続権を失った場合はどうなるでしょうか?やはりAさんBさんが代襲相続するでしょうか?
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民法939条)相続放棄は代襲原因とはなっておらず、またはじめから相続人ではなかったので代襲相続はできません。
総括
相続に関する事案は非常に複雑で難しい問題があります。
民法の規定も改正が行われ、相続が開始した年代によっては相続分が変わったり、本件のように相続人の範囲が変わってしまったりすることもあります。
相続問題に関して少しでも疑問に思ったり、不安に感じることがあれば、専門家である当事務所にご相談下さい。