代襲相続② 私は相続人と違うのですか・・・
ご相談内容
大阪在住のAさんが事務所に来られて相談を受けました。
Aさんには妹のBさんがいます。AさんのおじいさんXさんが亡くなられたそうです。AさんのおとうさんであるYさんは数年前に亡くなられているそうです。
つまり、代襲相続に関する問題という事です。
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- 代襲相続について説明して下さい。
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被相続人が死亡する前に相続人となるべき者(推定相続人)が死亡その他の事由により相続権を失った場合において、その者が受けるはずであった相続分をその者の直系卑属が相続する事をいいます。
被代襲者は、被相続人の子又は兄弟姉妹であり、直系尊属及び配偶者については代襲相続は認められていません。
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- 代襲相続に関する要件等について説明して下さい。
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代襲原因
【被代襲者について】
①相続開始以前に死亡している事
②相続の欠格者である事
③相続に関して廃除されている事【代襲者の要件】
①被代襲者の子である事
②被相続人の直系卑属である事(被代襲者が兄弟姉妹の場合は傍系卑属)
③相続開始時に存在している事
④被相続人との関係で相続欠格、廃除がない事代襲者が代襲相続権を失った場合、代襲者の子に再代襲が認められています。
被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合、その子(甥、姪)には代襲相続は認められていますが、再代襲は認められていません。
戸籍等でXさんの相続関係、Aさんとの関係を調査したところ、AさんのおとうさんのYさんはXさんと養子縁組をしていました。そして、Aさんの妹BさんはXさんYさんの養子縁組後に生まれた子供ですが、Aさんは養子縁組前に生まれていた子供でした。つまり、AさんはXさんとの関係で、いわゆる養子の連れ子ということになります。
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- 養子の身分関係について説明して下さい。
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養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけると同一の親族関係を生ずる。(民法727条)
養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する。(民法809条)
養親及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。(民法729条)
通常養子は、実親と養親の両方から相続することができます。
離縁の日から養親子関係は終了し、将来にむかって何の親族関係も生じません。
Xさんの相続に関し、Yさんは養子です。従って縁組の日からXさんYさんは相続に関し実親子関係と同様な扱いになります。そして、BさんはXYさんの縁組後に生まれていますので、Yさんを代襲してXさんの代襲相続人となります。AさんはXYさんの縁組前に生まれていますので、代襲相続人とはなりません。
AさんとBさんで相続に関し、このような差がでるのは、BさんはXさんの直系卑属になりますが、AさんはXさんの直系卑属にならないからです。裁判で争われたこともありますが、これは確立した解釈です。(大津地判昭37.4.23)
民法727条は、養子縁組前の養子の血族(Aさん)と養親(Xさん)とは血族間におけると同一の親族関係をもつものとはされていません。
一歩進んで
もし、Xさんに実子Zさんがいて、ZさんとYさんとが婚姻いていて、AさんがYZさんの子供だった場合はどうでしょう。
この場合は、AさんはZさんを通じてXさんの直系卑属となりますので、AさんはXさんの代襲相続人となることができます。
事案は少し違いますが裁判例があります。(大阪高判平元年8.10)
AさんにはXさんについての相続人、代襲相続人、養子縁組について説明し、納得していただきました。
総括
今回は少し複雑で専門的な相続事例を紹介いたしました。
本件のように、相続人になるのか、相続人にならないのか、判断に迷う事が多くあります。できれば、養子縁組をする段階で、相続関係についても考えて進める事が望ましいと思われます。
少なくとも、養子縁組、離縁、婚姻、離婚等を行う時には相続についても少し考えていただきたいと思います。
少しでも、相続に関して、疑問に思ったり、不安に感じたら専門家である当事務所にご相談下さい。