私の相続分はどれだけ、相続放棄はどうなるの・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に相談に来られました。

相談内容は、私の相続分はどれだけになるのでしょうか?ということです。特に難しい内容ではないのですが、いわゆる2重の相続資格を有しているとのことです。

Aさんのお父さんは数年前に亡くなったそうです。そして、AさんのおじいさんであるXさんが今回亡くなったそうですが、実は、Xさん夫婦はAさんと養子縁組していました。

Xさんの相続人は、Xさんの配偶者YさんとXYさんの子供Zさん、養子のAさんそしてAさんのお父さんの代襲相続人Aさんです。

つまり、Aさんは子供(養子)としての相続分と、代襲相続人としての相続分が認められるか?ということです。

  1. 今回のAさんのケースで2重の相続分が認められるのでしょうか?
    この問題を正面から取り上げた裁判例は見当たらず、学説でも意見が分かれているみたいです。しかし、登記実務では、次のような先例が出ております。

    自己の孫(亡長女の嫡出子)を養子としている者が死亡した場合は、右の孫は、被相続人の養子として、また亡母を代襲して2つの身分で相続人となる。(昭和26・9・18民甲1881局長回答)

つまり登記実務では2重の相続分を認めていますので、今回の相続分はAさん2/6(養子分として1/6、代襲相続分として1/6)Yさん3/6、Zさん1/6ということになります。

では、もう一歩進んで、養子としての相続だけを、または代襲相続だけを相続放棄できるかという問題があります。
これについても登記実務では先例があります。

相続の放棄は、相続人が自己のために開始した相続につき、その効力を受けることを拒絶して、これを消滅させる意思表示である以上、次順位の兄弟としての身分を有する養子が相続の放棄をしたときは、当然第一順位たる直系卑属としての相続権と次順位たる兄弟としての相続権を放棄したものと解される。(昭和32・1・10民甲61局長回答)

ただし、裁判例では、被相続人の妹で、かつ養子であった事案につき、相続の放棄はそれぞれの資格に応じ個々に放棄することができるとしたものがありますので、注意が必要です。(京都池判昭和34・6・16)

  1. 他に2重の相続資格の場合はありますか?
    他にも考えられますが、よくでてくるのは実子と養子が婚姻しており、その一方が死亡したため、配偶者としての相続資格と兄弟姉妹としての相続資格を有する場合があります。この場合も正面からとらえた裁判例はなく、学説も固まっていません。
    しかし、登記実務では先例がでております。 長女と婚姻した養子(被相続人)が死亡し、その直系卑属がない時は、妻たる長女は、配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できない。(昭和23・8・9民甲2371局長回答)

Aさんには相続資格の重複について、判例の考え方、登記実務での処理の仕方を説明し納得していただきました。

総括

相続の問題については、だれでも多く経験するものではく、また、ひとつとして、他人の相続と同じものはありません。

相続問題に巻き込まれたり、巻き込まれそうになって不安な毎日を送られている方がたくさんおられるのも事実です。

相続問題について少しでも不安に感じたり、疑問に思う事がありましたら、相続の専門家にご相談下さい。