内縁関係④ 夫にマンションを買ってもらったのですが・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんから連絡を受け、ご自宅に訪問して相談をうけました。

Aさんの夫は昨年亡くなったそうですが、亡くなる数年前に夫にマンションを買ってもらってAさん名義にしているそうです。

相談というのは、実はAさんと夫とはいわゆる内縁関係で、長年一緒に暮らしてきたそうです。

というのも、どうしても別居中の奥さん、Xさんが離婚に同意してくれないからだそうです。別居中のXさんとの間には子供が一人いるそうです。

  1. この場合の相続関係について教えて下さい。

    内縁の妻Aさんには相続権はありません。別居中でもXさんの相続分は相続財産の 1/2、子供1/2となります。

Aさんは、マンションを夫に買ってもらったし、夫とは内縁関係なので遺産相続についてはできないものと諦めていたところ、今頃になってXさんから遺留分の減殺請求をされてしまったそうです。

  1. 遺留分、遺留分減殺請求について説明して下さい。
    遺留分とは、被相続人の配偶者、直系尊属、直系卑属に留保されている相続財産の割合をいいます。兄弟姉妹には認められていません。

    遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である時は3分の1であり、その他の場合は2分の1です。

    遺留分減殺請求とは、被相続人が遺贈または贈与をした結果、遺留分を侵害された相続人が、遺贈または贈与を具体的遺留分を保全するのに必要な限度で減殺することができる、つまり取り戻すことができる権利の事です。減殺請求をすることにより、当然に遺留分を侵害している相当の財産を取り戻すことができます。

今回の内容について説明しますと、

  1. Aさんは内縁の夫からマンションを買ってもらいました。これは、内縁の夫からの贈与になります。
  2. 夫が亡くなって相続が開始しました。相続人はXさんと子供でそれぞれ1/2づつです。
  3. Xさんは思います。相続財産が少なすぎる。もっとどこかにあるはずだ。そうだAさんのマンションは夫が買ったマンションだ。あのマンションを買ってAさんにあげたからこんなにも相続財産が少ないのだ。私たちの相続財産を、遺留分をAさんは侵害している。その財産を取り戻そう。
  4. XさんはAさんに対して遺留分減殺請求の内容証明郵便を出します。

簡単に言いますとこれが遺留分の減殺請求になります。

  1. 遺留分の減殺請求の要件について説明して下さい。
    遺留分減殺請求を行使できるのは、遺留分を侵害された遺留分権利者とその承継人で、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があった事を知ってから1年以内に行使しなければなりません。また相続開始から10年間で時効により消滅します。

    遺留分減殺請求権の行使は受遺者あるいは受贈者に対する一方的意思表示で減殺の効果が発生します。尚、遺留分減殺請求は遺留分を保全するのに必要な限度でしかすることができません。

AさんはXさんからの内容証明郵便を読んでビックリして当事務所に相談されたのですが、実は夫が亡くなってからしばらくして、AさんとXさんらは遺産相続について話し合いを行い決着済みとのことでした。

そうであるならば、その話し合いの日から1年が経過していますので、遺留分減殺請求権は時効によって消滅しています。今度はAさんからXさんに対して遺留分減殺請求権は時効によって消滅した旨の内容証明郵便を送付しました。

その後は何の音沙汰もなくお互いに平穏に暮らしているそうです。

総括

色々な事情があって内縁関係を続ける場合が多いですが、相続に関しては、内縁関係で有利になる事はないように思われます。

法律的に保護を受け、相続財産を相続できるようにするのにはやはり法律上も婚姻しなければなりません。

内縁関係を続けるのか、法律上も婚姻をするのかは当事者の自由ですが、一度よく話し合って、相続、遺言の専門家に相談する事をおすすめいたします。