内縁関係③ 借家はどうなるの・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんから連絡を受け、ご自宅に訪問して相談を受けました。

相談内容は、夫Xさんがなくなったので、相続について説明を聞きたいとの事です。

実はAさん、Xさんとは長年共同生活をしておりましたが婚姻届は出しておらず、いわゆる内縁関係でした。AさんXさんの間には子供はいませんでしたが、Xさんには先妻との間に2人の子供YさんZさんがいました。

Aさんは当然この借家は自分が相続して住み続けることができるものと思っていたらしく、その相続手続きの相談でした。

  1. Aさんはこの借家を当然に相続して住み続けることができるのでしょうか?
    当然には、相続して住み続ける事はできません。
    そもそも、内縁配偶者には相続権が認められておりません。
    しかし、それでは内縁配偶者に生活上の影響が大きすぎますので、借家法第7条の2において、一定の条件を満たした場合、内縁配偶者又は事実上の養親子は賃借人の権利義務を承継すると定められました。この規定は借地借家法第36条に引き継がれています。

    条 件
    ①居住用の借家である事
    ②賃借人に相続人がいない事
    ③賃借人が死亡した当時、同居していた事

Aさんの場合、Xさんには相続人である子供Y、Zさんがいますので、この規定の適用はありません。それでは、Y、Zさんから建物明け渡しを請求された場合、家主さんから建物の明け渡しを請求された場合、Aさんは明け渡さなければならないのでしょうか?

明け渡さなければならないのであれば、Aさんにとって生活上あまりにも影響が大きすぎます。

  1. 明け渡さなくてよい方法、交渉の方法はありますか?
    このままであれば、Aさんにとって生活上あまりにも影響が大き過ぎますので、居住する権利の主張を認めた判例があります。
    尚、居住権を認めただけで、相続権を認めたわけではなく、あくまでも判例ですので全ての場合に適用されるわけでもありません。

    賃借権は相続人に相続される事、また、内縁の妻は相続人が相続した賃借権を援用して賃貸人に対して建物に居住する権利を主張できることを確認した判決。
    (最高裁判昭和42年2月21日判決)

    賃借権の相続人にその建物を使用すべき差し迫った必要性がないような場合などは、相続人が内縁の妻に対してその建物の明渡を請求することが権利の濫用にあたるとして、明渡請求は認められない。
    (最高裁判昭和39年10月13日判決)

AさんとY、Zさんに、相続に関する法律関係、内縁に関する法律関係、上記判例の存在や考え方を説明して、本件の相続関係を整理し、Aさんは無事借家権を取得することができました。

総括

最近では、法律上の婚姻という形式にとらわれない事実婚や共同生活を行う人が増えてきております。判決理由中ですが、次のような内容の最高裁判決もあります。しかし、法律上の婚姻という形式に従わない以上どうしても法律上では保護されにくいものです。法律上での保護をお考えであれば、やはり遺言を書くべきでしょう。一度相続遺言の専門家にご相談下さい。

内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。
(最高裁判平成10年2月26日判決)