内縁関係② 借地上の建物は私名義ですが・・・

ご相談内容

大阪在住のAさん宅を訪問して相続関係について相談を受けました。

夫が亡くなられて、相続財産は預貯金のみとのことです。しかし、ご自宅の建物はAさん名義となっているのですが、借地上に建っており、借地契約は夫名義で契約しているそうです。

何の問題も無く、借地権を相続すればいいと思ったのですが、実は、Aさんとご主人は内縁関係だったのです。

しかし、Aさんは借地権も相続したものと思っていたらしく、おまけに、預貯金も全部自分が相続したものと思い込んでいたそうです。夫には、先妻の子供が2人いるそうです。

  1. Aさんの相続関係について説明して下さい。
    残念ながら、Aさんには、内縁の夫の相続権はありません。基本的には、夫の相続財産は全て先妻の子供2人が相続することになります。
  2. Aさんの建物はどうなるのでしょうか?取り壊さなければならないのでしょうか?
    Aさん建物は、夫の借地を転借して建っているものと解釈できます。つまり、夫が地主から土地を借りて、夫がAさんに土地を貸している状況です。おそらく、Aさんと夫との借地契約は無償でしょうから、使用貸借関係という事になります。そして、夫の子供は借地権を相続しますが、Aさんの使用借権はそのまま存続すると解釈することもできます。

    また、地主も、土地の賃貸借契約において、Aさんの建物が建っていることを知っていて賃料を受け取っていたり、Aさんの建物が建っている事を黙認していた場合等は、事実上の賃借権者はAさんという事になります。

Aさんには、内縁関係について、内縁の相続関係について、そしてAさんの相続関係について説明を行いました。

Aさんはひどくビックリしておられましたが、事実婚と法律婚では、相続に関しては大きな差がでてしまいます。

今回の件は、取り敢えず亡くなられた夫の相続人を確定しました。Aさんがいうとおり、先妻の子供2人のみが相続人で確定しました。

子供2人とAさんとは、交流こそは無かったものの面識はあり、それなりにお互いに理解力がある方々でしたので、当事務所の専門家も交えて話合った結果、借地権はAさんがそのまま引き継ぎ、預貯金は3等分することに決まりました。

総括

今回の遺産分割については、理解力のある方々でしたので、トラブルにはならずにすんなりと話はまとまりました。

相続人の子供2人は借地権についてはそれほど問題にせず、Aさんに譲ってくれました。預貯金の3等分は、Aさんにとっては出来すぎの相続だと思います。私自身も問題にしなかったのですが、実は非常に気になっていることがありました。それは、Aさん名義の建物は本当にAさん自身のお金で建てたものなのでしょうか?これは非常に大きな問題です。もし、名義はAさんにしているだけで、実は内縁の夫のお金で建てた建物だった場合や内縁の夫のお金が少しでも入っていた場合・・・

私の依頼者はAさんですし、今回の遺産分割は円満に話がついた事ですし、深く詮索しない事にいたします。

ただ、やはり、内縁関係を続けておられる方は、一度相続、遺言の専門家と遺産相続について、相続人の事について、権利義務について、詳しく相談されておくことをおすすめいたします。