負担付遺贈で不動産をもらったのですが・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんから連絡を受け、ご自宅に訪問させていただきました。

Aさんの相談とは、義理の父が先月亡くなった。父は遺言書を遺しており、その内容は、全財産をAさんに遺贈する。但し、遺贈するにはXさん(義理の父の弟つまりAさんの義理のおじさん)に生活費として毎月10万円支払う事。となっていました。

Xさんは少し精神的な障害をお持ちで、日常生活はできるもののずっと独身で、Aさんの義理のお父さんはXさんの生活がずっと気がかりでしかたがなく、面倒を見て来られたそうです。

Aさんは、財産を相続するのはいいけれど、負担が大きすぎるのではないかとの事で、父の気持ちもわかるし、どうしようかと相談に来られました。

  1. 財産を相続する代わりに特定の義務を負う、つまり、負担付遺贈とはどのような事ですか?
    遺贈された財産を取得するとともに一定の負担を履行すべき義務を負うことです。
    しかし、受遺者が義務を履行しないと、遺贈の効力がない、あるいは遺贈の効力を失うというものではありません。また受遺者は、遺贈の目的の価格を超えない限度においてのみ負担した義務を履行すべき義務を負う事になります。
  2. この遺言のとおり必ず相続して、負った義務を履行しなければならないのですか?
    そんな事はありません。通常の遺贈と同じく負担付遺贈を断ることもできます。
    この場合、一般の遺贈はいつでも断る事ができますが、本件みたいに包括的な遺贈(包括遺贈)の場合は、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有しますから、遺贈が効力を生じた事を知ってから3ヶ月以内に遺贈放棄の手続きをとらなければなりません。
  3. 負担付遺贈を断ったら財産はどうなりますか?
    負担付遺贈を断った場合は、その遺贈された財産は負担の利益を受けるべき者、つまり本件ではXさん自らが受益者になることができます。ただし、遺言者が負担付遺贈が断られた場合はこうしてほしいと書かれていたらその定めに従います。
    また、負担付遺贈も遺贈ですから遺留分を侵害することはできません。
  4. 遺贈を受けるだけ受けて、義務を履行しない場合もあり得るのですか?
    財産をもらったのであれば、義務を履行しなければなりません。もし義務を履行しなければ、相続人または遺言執行者は相当な期間を定めてその義務の履行を催告し、その期間内に履行が無い場合は、遺言の当該部分の取り消しを裁判所に請求することができます。

本件の負担付遺贈は、いくら遺贈の目的の価格を超えない限度においてのみ負担した義務を履行しなければならないと言っても、遺贈財産に比べて負担の方が大き過ぎるような気がしました。

しかし、Xさんの現状や義理の父の気持ちもわかりますので、Aさんの将来の生活の事も含めてよくよく考えて負担付遺贈を承認するか、放棄するか決めるようにアドバイスをしました。

総括

最近では、遺言を遺す人がかなり増えてきています。やはり自分が亡くなった後の家族の生活や親族の事が気になるのは当然です。

とは言っても、負担付遺贈を行い財産を遺贈しても、負担のほうが大きかったら誰もその負担付遺贈を承認することはありません。そうなってしまったら、せっかくの遺言が台無しです。やはり専門家と相談して、負担付遺贈でも承認していただき、きちっと負担の履行をしてもらいたいものです。