息子に財産を相続させたくないのですが・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に相談に来られました。

相談内容は、息子にAさんの財産を相続させたくない、全部娘に渡してやりたいとのことでした。

Aさんは現在独り暮らしで、奥さんは数年前に亡くなられたそうです。

子供は息子のXさん、長女のYさん、次女のZさんだそうです。従って推定相続人はXさんYさんZさんです。

どうして、AさんはXさんに相続させたくないのかと言うと、大学に入ってギャンブルを覚え、お金を欲しがり母親を泣かせ、ケンカをしては警察から呼び出される事も度々あったからだそうです。

大学はすぐに辞めてしまい、仕事もせずに遊んでばかりいて、Aさんのお金もかなり使いました。

このままもしAさんが亡くなれば、妹たちにどんな迷惑をかけるかわかりません。

とにかく、Aさんの財産をXさんに相続させたくないとの事です。

  1. 相続権を奪うにはどのような方法がありますか?
    相続人が兄弟姉妹の場合、本件では、もし相続人がAさんの兄弟姉妹の場合でしたら、遺留分がありませんので、その兄弟姉妹に相続させないと遺言書を書いたり、他の誰かに全財産を遺贈すればそれで相続権を奪うことができます。しかし、本件では推定相続人は子供ですので、遺留分があります。この場合、相続権を奪うならば、廃除の手続きによらなければなりません。
  2. 遺留分とはどういことですか?
    被相続人の配偶者、直系尊属、直系卑属に留保されている相続財産の割合をいいます。兄弟姉妹には認められていません。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の時は3分の1であり、その他の場合は2分の1です。つまり、Xさんに相続させないと遺言書を書いても、誰かに全財産を遺贈しても、2分の1×3分の1=6分の1の遺留分(相続権)がXさんに留保されています。
  3. 廃除とはどのような手続きですか?
    家庭裁判所に、推定相続人の廃除を求める審判申立てを行います。
    ①被相続人に対する虐待
    ②被相続人に対する重大な侮辱
    ③推定相続人の著しい非行
    があった場合で相続権を奪いたい場合に家庭裁判所に申し立てます。推定相続人の廃除は遺言でもすることができます。この場合は遺言執行者が申し立てを行います。
  4. 一度廃除をすると取り消すことはできませんか?
    廃除の取り消しの申し立てをすることができます。相続廃除された推定相続人が、将来態度を改め被相続人が許すようなことがあれば相続廃除の取り消しの申し立てを行いその相続権を復活させることは可能です。これは、遺言によってもすることができます。

Aさんには、遺留分の事や相続廃除の手続き、遺言書の書き方や効力について詳しく説明しました。

相続権を奪ってしまう事は、その相続人にとってはすごく重大な事で、その人の将来や他の相続人との関係にまで影響を及ぼす場合があり得る事も説明し、本日の相談は終了しました。

1週間後にAさんに再び事務所に来ていただき、打ち合わせを行いました。

よくよく考えた結果、今回は相続人廃除の手続きを行わず、遺言書を作成することにされました。

総括

相続問題と一口に言っても、生前の被相続人と推定相続人との関係、推定相続人同士の関係、推定相続人と親族の関係等様々で千差万別です。

相続に関する手続きは生前にも出来ることが数多く用意されていますが、ほんとうに、被相続人のためになるのか、相続人のためになるのか、これは難しい問題です。

相続遺言の専門家にご相談いただき最善の方策を共に考えて行いたいと思います。