相続放棄②死亡退職金、生命保険金はどうなるの・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られ相談を受けました。

ご主人Xさんが先月亡くなられたそうですが、Xさんは大のギャンブル好きで多くのサラ金から借金をしていたそうです。

その借金が約3000万円もあり、資産と呼べるものは何もなく、アパート住まいであり、現預金もわずか数千円だけだったそうです。

相続人は、配偶者のAさんと子供2人で相続放棄をしようと思っているとのことでした。

今までの話ならばすぐにでも相続放棄をしたほうが良いのですが、相談事がまだ他にもあるそうです。

  1. 借金も相続するのですか?
    積局財産、つまり不動産や現預金、債権だけでなく、消極財産、つまり借金や借家料等の支払い債務も相続します。
  2. 相続放棄について教えて下さい。
    相続財産に属する一切の権利義務の相続を拒絶する事です。
    相続人となった事を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。相続放棄の申述が受理されると、放棄者は初めから相続人でなかったことになります。

Xさんは大のバクチ好きで、バクチで大きな借金をつくりましたが、結構家族想いのところもあって、生活は親子4人で普通に暮らせていたそうです。

実はXさん、長年上場企業に勤められていて、かなりの金額の死亡退職金があるとのことです。

また、遺品を整理していたら、保険証券が出てきて、高額の生命保険にも加入していたみたいです。

  1. 相続放棄をすれば死亡退職金は受け取れないのですか?
    これは難しい問題ですが、死亡退職金が相続財産に含まれるかどうかの問題だと思われます。そして、受給権者つまり受取人が法律や会社の退職金規定等の内規で定められている場合は相続の対象にならない、つまり相続財産に含まれません。
    一方、受給権者が法律や会社の退職金規定等の内規で定められていない場合は、死亡者本人所有の権利に属していたものと理解する事ができ、他の本人所有の財産と同様相続財産として扱うこととなっております。
    つまり、受給権者が法律や会社の退職金規定等の内規で定められている場合は、相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることができますが、定められていない場合は、相続放棄をすると死亡退職金を受け取ることができないものと思われます。
  2. 相続放棄をすれば生命保険金は受け取れないのですか?
    これも死亡退職金と同様に考えることができます。
    つまり、生命保険金が相続財産に含まれるかどうかです。
    生命保険金の受取人が特定の相続人に指定されている場合は、その相続人の自己固有の財産として保険金請求権を取得する事になります。保険金受取人が相続人とのみ指定されている場合も同様に考えることができそうです。
    生命保険金の受取人が被保険者となっていない場合は、相続人の自己固有の財産と考えても大丈夫のようです。従って、相続放棄をしても生命保険金を受け取ることができるものと思われます。

Aさんには、死亡退職金の会社内規をよく確認する事、生命保険約款等、契約内容をよく確認し、相続放棄をしても受け取れるようであれば相続放棄をする事をおすすめいたしました。

その後、家族全員で相続放棄を行い、次順位の相続人になる方や債権者には当事務所から通知をしました。

総括

相続放棄をするには熟慮期間内、つまり自己が相続人となった事をしってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。

また、一度相続放棄をしてしまうともう後戻りはできず、後で保険金の受給や、全く知らなかった不動産の相続もできなくなります。

借金等があきらかに多いと解っている時はともかく、どうかなぁと少しでも疑問に思うことがありましたら、専門家にご相談下さい。相続放棄は良くも悪くも自分自身の将来に大きく影響いたします。