自分が相続人だと確認したいのですが・・・

ご相談内容

大阪在住のAさんから連絡があり、少し確認したいのですが・・・との事です。

Aさん宅に訪問させていただき、お話を聞きました。

内容は、私はこの土地の相続人だと思う。現在は知らない人が使っているみたいだがどうすればいいだろうか?と言うことです。

登記簿を確認しますと場所は神戸市、明治40年家督相続として、昭和10年に登記されていました。

  1. 家督相続ってどういうことですか?
    戸主たる身分関係の相続の事で、その相続人は1人に限られていました。また家督相続の効力として、前戸主に属する一切の権利義務(一身に専属するものを除く)を包括的に承継しました。昭和22年5月3日以降に開始した相続については家督相続の規定の適用が廃除されております。

取りあえず、戸籍等の収集から始め、相続人を確定させました。

数次相続が開始していましたが、確かにAさんは法定相続人です。法定相続人の一人で、他に8人の共同相続人がいました。

  1. 共同相続人の権利義務について教えて下さい。
    相続人が数人ある時は、相続財産はその共有に属する(民法第898条)
    各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する(民法第899条)

Aさんは被相続人の玄孫(やしゃご)で、被相続人の相続開始から70年以上経っており、4世代下ですので、他の共同相続人は見たことも、聞いたこともない知らない人が半数でした。

相続財産の土地が神戸市にある事をAさんが知っていたのは、おじいちゃんや親から話を聞いていたからだそうです。相続人の一人であるにもかかわらず、管理もしない、固定資産税も負担していない為、いつかは何らかの大きな請求が来たらどうしようと気が気でなかったそうです。

Aさんの意向は、できる事ならこの土地を処分してしまいたい。少なくとも権利義務関係をはっきりとさせてほしいとの事です。

  1. 相続回復請求権について教えて下さい。
    相続回復請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないと時は消滅する。相続開始の時から20年を経過した時も同様とする。(民法第884条)
    実は、相続回復請求権については民法にこの規定しか定められておりません。したがって、権利の内容については、判例等によらなければなりません。

さて、Aさんは相続回復請求権を行使することができるでしょうか?被相続人の相続開始から70年も経っていますのでまずムリでしょう。また、古い判例ですが、相続回復請求権は一身専属権であるとして、相続性を否定しております。

その事をAさんに説明し、また現在占有している人が取得時効の主張をしてくるかも知れない旨を説明しました。

  1. 取得時効について教えて下さい。
    占有状態が一定期間継続することによって、権利を取得する事。
    20年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
    10年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意無過失ならば、その所有権を取得する。

他の共同相続人に連絡をとり、今後の進め方の打ち合わせをしていますと、現在その土地を占有しているのは遠縁の人という事がわかりました。そして、その占有者に近い共同相続人がいる事もわかりました。ここまで相続人、占有者の関係がわかってくると、話は早く進み、まとまりやすいものです。

もともとAさんは権利関係をはっきりさせたかっただけで、不動産やお金が欲しかった訳ではありません。一方占有者は、このままこの土地の使用を継続したい意向で、できれば取得したかったそうです。

結局相続登記を済ませて、売買により占有者へ登記名義を変更いたしました。

総括

占有者に後で聞いた話ですが、もともとこの土地には家が建っており、そこに被相続人と自分たちは住んでいた。そして、被相続人から自分の親へ贈与があった。だからそのままこの土地を使っていたそうです。

でも、それはそれで何も証明できなし、遠縁でも親族であるので争いたくは無かったそうです。また、いつかはこのような日が来ると思っていたそうです。

血は水より濃いといいますが、どこかで血のつながりってでてくるものだなぁと思いました。