私は家を出て行かなければならないの・・・
ご相談内容
大阪在住のAさんから連絡を受け、ご訪問させていただきました。
ご相談内容は、私は家を出て行かなければならないのでしょうか?ということです。
Aさんは現在独り暮らしです。ご主人は3ヶ月前に亡くなったそうで、Aさんがお住まいの土地建物はご主人のお父さんであるXさんが所有者だそうです。
AさんとAさんのご主人が結婚する時にXさんが、ここに住んだらいいよって言って下さったそうで、それからずっと無償でここに住んでいるそうです。
Xさんは別のところに住んでいて、推定相続人は2人、Aさんのご主人の長姉Yさんと次姉のZさんです。AさんとY姉さん、Z姉さんとはAさんの結婚当初から仲が悪く、ほとんどしゃべることも無く、連絡を取ることもありませんでした。
Xさんは86歳と高齢なこともあり、ご主人が亡くなる少し前から病気の為、入院生活が始まってしまいました。
Aさんのご主人が亡くなって間もなく、Y姉さんから連絡があり、Xさんに万が一の事があったら相続人はY姉さんとZ姉さんの二人だから、Aさんには出て行ってもらうと言うのです。
Y姉さんもZ姉さんもXさんから自宅を購入してもらっていて、Aさんが住んでいるご自宅は本来Aさんのご主人がもらう予定だったそうです。
Aさんはご主人が亡くなって気分が滅入っているのにこんなことを言われ、どこにも行くとこらが無く、困り果てて当事務所に相談されました。
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- AさんはXさんの相続人にはならないのですか?
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Xさんが亡くなった後、Aさんのご主人が亡くなったのであれば、Aさんのご主人はXさんの相続人となり、Aさんのご主人が相続した財産を今度はAさんが相続する事になります。
しかし、Aさんのご主人のほうが、Xさんより先に亡くなっていますので、Aさんとご主人に子供がいれば、その子供がご主人を代襲して相続人となりますが、子供がいませんので、Aさんには相続権はありません。
もう一つの問題は、Aさんは無償で土地建物を使用している、いわゆる使用貸借関係ですから、借主が死亡した時、つまりご主人が亡くなった時に本来は使用貸借関係は終了しております。使用貸借権は基本的には相続されません。
Aさんに、できるだけ早くに賃貸借契約や使用貸借契約をしたり、あるいはXさんに遺言書を書いていただくように頼んでみてはどうかと説明したところ、Xさんは病院で寝たきりになり、ほとんど意思表示ができない状態になってしまっているとのことです。
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- Aさんにはもうどうする事もできないのでしょうか?
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過去の判例では、次のような事がありました。
①賃借人は内縁の夫と暮らしていて、賃借人が死亡したケースです。賃借人の相続人が賃貸借契約を解除した場合、内縁の夫は出て行かなければならないのか?色々な条件があるのでしょうけれども、裁判になったケースでは出て行かなくてもよかったみたいです。
②本件のケースで、亡くなった順番がXさんAさんのご主人の場合、Aさんは出て行かなければならないのか?
裁判になったケースでは、使用貸借権の相続を認めたようです。
①でも②でも必ず認められるというものではありません。色々な条件がそろった時に認められた判例があるということをお伝えしました。
さて、Aさん、Y姉さん、Z姉さんに、賃借権、使用貸借権、相続についての判例等が示す考え方を何度も何度も説明しました。成年後見制度についても説明し、3人そろっての会合にも参加させていただき、何度も話しあった結果、Y姉さんZ姉さんから条件を付けられましたが、Aさんの使用貸借権を認めてもらいました。最後はAさん泣きながらお姉さん方にお礼を言ってました。
総括
相続問題は公平、不公平の問題だけでなく、相続人やまわりの人たちの生活に直接大きな影響をもたらす場合があります。
Aさんのように、粘り強く何度も何度も交渉して最後に勝利を勝ち取った方もおられます。
一方、相続問題で長い間想い悩まれて、とうとう精神上に障害が出てしまった方もおられます。
相続に関する事で、気になることがある場合は早めに専門家にご相談下さい。きっと何らかのかたちで相続人の方のお力になれると思います。