遺言書を書きたいのですが・・・
ご相談内容
大阪在住のAさんから連絡を受けて、ご自宅へ訪問いたしました。
ご相談内容は、遺言書を書きたいがどうすればよいかと言うことでした。
Aさんは83歳で独身、40歳の時に離婚し、子供が長男、長女の2人で、それぞれ独立して生活しているそうです。内縁の妻と同居中で、推定相続人は子供2人、長女とは数年に1度ぐらいは会うそうですが、長男とは全く会わないそうです。全く会わないと言うよりも、お互いに会いたくないそうです。
詳しくは語りませんがAさんに対し、昔かなりひどい仕打ちや侮蔑があったみたいです。
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- 内縁の妻も相続人になれますか?
- 残念ながら内縁関係では相続人になれません。内縁の妻に財産を渡したいのであれば、生前に贈与するか、遺言で遺贈するしか無いと思われます。
さて、自筆証書遺言を書きたいという事でしたので、要件、遺言者が全文、日付及び氏名を自書し、これに押印するという事をもう一度確認し説明いたしました。そして遺言の内容をお聞きしました。
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- 遺言でできる事って決まっているのですか?
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遺言でなし得る事項は法律で決まっております。例えば、“お正月には兄弟全員が実家に集まり食事をする事”とか“家業の経営方針についての指針”などは道徳的な効力はともかく、法律上は拘束力はありません。
■遺言でなし得る事項の例■
①相続法の修正に関する事項
推定相続人の廃除及びその取り消しなど
②財産の処分に関する事項
遺贈など
③身分上に関する事項
認知など
④遺言の執行に関する事項
遺言執行者の指定及び指定の委託など
祭祀主宰者の指定など、その他にも色々とありますが、遺言でなし得る事項は、生前行為でもできる事もあります。
Aさんは、不動産を所有しておらず、財産は預貯金のみで、内縁の妻に半分、長女に残り半分、長男には相続分なしとしたいようです。
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- 遺留分について教えて下さい。
- 遺贈又は贈与で財産を自由に処分することができますが、遺留分に関する規定に違反する事はできません。相続制度が遺族の生活保障及び遺産形成に貢献した遺族への財産の清算的意味合いをもっていますので、遺族にも正規に財産を取得する権利があるはずです。その権利の事を遺留分といいます。遺留分権利者は、法定相続人のうち、配偶者、子、直系尊属についてのみ認められています。またその遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であるときは、3分の1、その他の場合は2分の1とされております。
Aさんの長男には遺留分が認められており、相続財産の1/2×1/2、つまり1/4の割合の遺留分があります。そのことをAさんに説明し、完全に長男さんの相続権を無くしてしまうには、相続人廃除の手続きを取らなければならない事を説明しました。
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- 相続人の廃除について教えて下さい。
- 遺留分を有する推定相続人が被相続人に対し、“虐待”“重大な侮辱”“著しい非行”があった場合、家庭裁判所に廃除の請求をすることができます。これは、生前にもできますが、遺言でもできます。
Aさんに、相続人廃除の意思表示も遺言書でするように説明するなど、打ち合わせを数回重ねた後、自筆証書遺言が完成いたしました。
総括
いつでも簡単に書ける自筆証書遺言ですが、内容によっては全く法律的効力がなかったり、法律の適用により一部の財産処分が制限されたりすることもあります。
また、要件を満たさなければ全く遺言として無効になってしまう可能性もありますので、どんな簡単な遺言でも一度は専門家に相談、確認されてはいかがでしょうか?