相続放棄①お父さんが遺した借金をどうしよう・・

ご相談内容

大阪在住のAさんが事務所に来られました。話を聞くとお父さんが借金を残して亡くなってしまったそうです。

Aさんの両親は数年前に離婚して、Aさんは現在母親の近くのアパートで独り暮らしをしているそうです。姉は神奈川で独り暮らしをしており、それぞれ独立して生活をしておられます。ご両親の離婚の原因はお父さんがあまり仕事をせずに、借金ばかり増えて、生活ができなかったからだそうです。

そして、父と母はそれぞれ数年前に自己破産をされているそうです。

Aさんは、父親とは数年来会っていないそうで、会いたいとも思っていなかったそうですが、そんな折、父親が亡くなった旨の連絡を名古屋の弁護士さんから受けたそうです。

父と弁護士さんに会いに行って話を聞くと、やはり父は多額の借金を残して亡くなったそうです。弁護士さんはその債権回収の件でAさんに連絡をしてきたみたいです。

  1. 借金も相続するのですか?
    積局財産、つまり不動産や現預金、債権だけでなく、消極財産、つまり借金や借家料等の支払い債務も相続します。
  2. 借金などの債務はどのように相続するのですか?
    ①借金等(可分債務)
    相続人が数人いる場合、その借金は法律上当然に分割され、それぞれの相続分の割合で承継します。
    ②連帯債務
    連帯債務者の一人が死亡した場合、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において本来の債務者と連帯債務者になると思われます。
    ③賃料債務等(不可分債務)
    各相続人が債務全額を支払う責任を負い、各相続人間では求償関係が残ると思われる。
    ④保証債務
    保証債務についての相続性については色々と議論がありますが、通常の、金銭債務の保証などは相続されると思われます。

Aさんのお父さんは、積極財産はほとんどなく、消極財産、つまり多額の借金を残して亡くなりましたので、至急に相続放棄の手続きをするように説明をしました。当然お姉さんにもその旨伝え、姉妹で相続放棄の手続きをしました。

  1. 相続放棄をすればどうなるのですか?
    相続が開始した場合、取り得る方法は3つあります。
    ①単純承認
    相続人が無条件、無制限に被相続人の権利義務を承継します。プラスの財産だけでなくマイナスの財産も全て相続します。
    ②限定承認
    相続人が相続によって取得する財産の範囲においてのみ、債務を弁済する責任を負う。つまり、相続した財産の限度額までしか債務は支払わなくてよい相続の仕方です。相続人となった事を知ってから3ヶ月以内に相続人全員で共同して、家庭裁判所に申述しなければなりません。
    ③相続放棄
    相続財産に属する一切の権利義務の相続を拒絶する事です。相続人となった事を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。

単純承認は、何の手続きも必要としませんが、法律上単純承認をしたと擬制される場合があります。

法定単純承認事項
①相続人となった事を知った後、限定承認も相続放棄もしなくて 3ヶ月が経過したとき。
②相続財産の全部又は一部を処分したとき。
③相続財産の隠匿など、背信行為などを行ったとき。
などです。

総括

相続が開始すると、相続人やまわりの人に大きく影響いたします。多額の借金を相続してしまったら、相続人の生活を脅かすことにもなりかねません。トラブルが起こる前に、気になる事がありましたら、専門家にご相談下さい。