相続人は自分独りだと思うのですが・・

ご相談内容

「相続手続きをして下さい・・・」

現在は九州にお住まいのAさんが相談にこられました。

内容は、父母が亡くなったので、嫁さんの郷里に引っ越す事にされたそうです。

不動産の名義は父母及びAさんの共有名義でした。Aさんの話では相続人は自分独りだけですから、早めに手続きを終了してほしいとの事でした。

ご相談への対応

当事務所では、相続手続きの依頼を受けると、相続人の確定から始めます。

数次相続は開始しておりますが、何の問題もない相続手続きの依頼だと思われたので、順番に相続人の確定から手続きを開始しました。

戸籍謄本等を収集していると判明したのですが、生まれてからすぐに亡くなられた妹さんがおられた事がわかりました

ポイント1

  1. 生まれてすぐに亡くなった方も相続人になるのでしょうか?
    相続人は、被相続人が亡くなった時に現存している方です。ですから被相続人が亡くなった時に生きていて、次の日に亡くなった場合などは相続人となります。
  2. 相続人は被相続人が亡くなった時に現存している方ならば、おなかの中の赤ちゃんはどうなるのですか?
    これには法律に規定があり、おなかの中の赤ちゃん(胎児)はすでに生まれたものとみなされる(民法第886条第1項)ので、相続人となります。

それともう一つ判明したことがありました。

それは、亡くなったお母さんは若い頃に一度結婚していて、6年後ぐらいで離婚されていた事です。

しかも子供を2人産んでおられました。ここまでなら、ままある話で、当事務所でも過去に数件対応し解決いたしました。

ビックリしたのは、どのような事情があったのかわからないですが、その一度目の結婚、離婚をされていた事を、親類、縁者、誰一人として知らなかった事です。

当然Aさんも知っている訳がなく、私がその事実を伝えた時には、「何を言っているの?」「言っている事がわからない」とおっしゃておられました。動揺されておりましたが、非常に冷静でした。

見ず知らずの共同相続人2人(異父兄弟になります)に、お母様が亡くなられた事、不動産の事、相続が開始している事、あなた方が共同相続人になっている事、遺産分割協議の事等を説明したお手紙を事務所の方で作成し送付いたしました。

ポイント2

  1. 見ず知らずの共同相続人がいた場合はどのように対応するのか?
    当事務所では、その方宛にお手紙を書きます。いきなり会いに行ったり、お電話したりするとビックリしますよね。とにかくお手紙から始めます。

結論

その方たちはいつの日かこのような手紙が来ると思っていたそうです。
その方たちも実は、お母さんを探していたそうですが、日々の生活が忙しくて中々進まなかったそうです。

できる事なら生きているときに会いたかったとおしゃっておられました。(なんかテレビドラマみたい)

相続手続きの方は快く承諾していただき、スムーズに完了いたしました。

総括

本件は単純な相続手続きかと思われたのですが、精神的に非常に苦慮した部分がありました。

相続手続きの依頼を受けて、終了した時にはいつも、亡くなられた方の人生の一部を垣間見たよな気分になります。

人ひとりの人生の重みを感じ、相続手続きには、単純な手続きって無いなぁと思います。