遺言書を書いたのですがこれで大丈夫?

ご相談内容

今回は遺言についての相談です。

遺言を書いたAさんが私に遺言書を見せて相談されました。

「遺言書を書いたのですがこれで大丈夫ですか?」

  1. 自筆証書遺言の有効性について教えて下さい
    自筆証書遺言の有効要件は法律で決まっております。
    それは、遺言者が遺言の全文、日付及び氏名を自書して、これに印を押さなければなりません。(民法第968条第1項)
  2. その有効要件を満たさなければ全く無効ですか?
    基本的には無効です。しかし、例えば、氏名を雅号、芸名、屋号で記載されていても、筆者の同一性が確認できれば有効とする見解もあります。又、日付を「第○会の誕生日」や「還暦祝賀の日」と記載した場合、日付が正確に解りますから一応有効ですが、「○年○月吉日」との記載は不正確ですので日付の記載がないものとされています。つまり無効です。

さて、Aさんの自筆証書遺言は、全文自筆、氏名、押印があります。

そして、日付の記載もありますが、なんと、その日付をホワイトペンで塗りつぶし、新たに日付を書き加えて、修正してありました。

  1. 自筆証書遺言の訂正はどのようにすればよいですか?
    自筆証書遺言の訂正等についても法律に定めがあります。それは、遺言の加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記して署名押印しなければなりません。(民法第968条第2項)
  2. 遺言書の訂正等の方式に従わない遺言は無効ですか?
    方式に違反する加除変更は無効です。従って、遺言書全部が無効になる場合もあります。しかし、遺言書の記載自体から見て明らかに誤記の訂正については、たとえ方式違反があっても遺言者の意思を確認する事については支障がないから有効となる場合もあります。

さてAさんのホワイトペンでの修正は自筆証書遺言の有効要件である日付の修正です。しかも、方式違反の修正です。

自筆証書遺言の有効性、遺言書の加除訂正の方式を説明しもう一度遺言書を新たに書くように伝えました。

  1. 自筆の遺言書が2通でてきました。後に記載した遺言書だけが有効ですか?
    これにも法律に規定があります。前の遺言が後の遺言と抵触する時は、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。(民法第1023条第1項)
    もちろん2通とも遺言書の有効性を満たしている場合の話です。

総括

自筆証書遺言は費用を掛けずにいつでもご自身の意思で作成することができます。

しかし、遺言書の有効要件は厳格に定まっており、ひとつ間違えば、せっかくの遺言書全部が無効になってしまう可能性があります。

本件では何の気なしに修正されたのですが、改めて私自身、有効性について考え判例等をチェックしました。